メンバー公認の青春音楽映画であり、実在したミュージシャンを描く伝記映画『ランナウェイズ』映画『ランナウェイズ』は、青春音楽映画であり、実在したミュージシャンを描く伝記映画だ。当人を知らないため、本作に特段興味は抱いていなかったが、青春音楽映画として作品は良かった。

1970年代に活動し、日本でも人気を博したガールズバンドの先駆け「ランナウェイズ」のボーカルだったシェリー・カーリー著「ネオン・エンジェル/NEON ANGEL」を基に、「ランナウェイズ」のギタリストだったジョーン・ジェットがプロデューサーに加わり製作されたというメンバー公認映画だ。

10代の今しかできないことを精一杯楽しんで!

10代の女子がガールズバンドを結成し、日本にツアーまで行っていたという事実は、それだけでインパクトがある。なので、日本ツアーの描写もあるし、ご接待する米搗きバッタな日本人も登場する。グルーピーな日本女性も多数登場する。壁のガラスを割って学生服姿の日本人女子たちが楽屋?に乱入するといった描写もあり。申し訳ないが、そういった部分はやや冷めて見ていた。

「A&R」(ビル・フラナガン著)という本で知った音楽業界の裏側。『ランナウェイズ』には、そういった面が描かれているし、当時の彼女たちには精神的に苦痛だったに違いない。やりばのなさがドラッグやお酒へと、追い込んでゆく。それが「有名になることは、尊敬されることと違う」と仕掛け人のキムが言うセリフに現れている。例えば、雑誌の記事にしてもらうために、内部分裂の話題をリークされることも。そんなことを責めたところで「キミたちのためだ」と開き直る大人が理解できないし、信頼できなくなる。そういったやるせない感情が手に取るようにわかる。大人の世界には胡散臭い人もいるのだ。

ジョーンのカバー曲「アイ・ラブ・ロックンロール」がヒットした記憶はある。だが、当のバンド自体を知らないので、鑑賞後にネットで検索してみた。You Tubeに動画(1977年のテレビ出演も)があったし画像もいっぱいひっかかった。その演奏はやっぱり10代だな、というレベルだったが、ビジュアルは映画で再現されていた。やっぱり本作での演奏シーンは、上手すぎる。でも、これぐらいしてくれないと映画としての魅力は半減してしまうから、それでいいのだ。劇中で最も驚かされたのは、「トワイライト」シリーズのクリステン・スチュワートの演技と歌唱力。その一方で、かつての名子役ダコタ・ファニングは、(狙いかもしれないが)いまいちパッとしないのが残念。彼女の子役からの脱却は、他の作品で見られると期待している。

で、本作を誰に勧めるかといえば。

「ランナウェイズ」を知らない10代の女子! 大人びることなく、10代の今しかできないことを精一杯楽しんで!という助言を込めて。


原題=The Runaways
日本公開=2011年3月12日
配給=クロックワークス
公式サイト=http://www.runaways.jp/
(c) 2010 Runaways Productions, LLC. All Rights Reserved.


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