映画『星守る犬』完成披露試写会舞台あいさつにてcJulie Minami2008年刊行された、村上たかしのベストセラーコミックが原作の映画『星守る犬』の完成披露記者会見&試写会舞台あいさつが5月9日に行なわれ、主演の西田敏行、玉山鉄二、川島海荷、中村獅童、岸本加世子、藤竜也、といったキャスト、そして瀧本智行監督と原作者村上たかしが登壇した。

同作は、“おとうさん(西田)”と秋田犬のハッピーが東京からいわき、遠野、弘前、石狩、名寄へ北上していく旅と、彼らの足取りを辿る市役所勤めの青年・奥津京介(玉山)とスターを夢見る少女・有希(川島)の姿を追うことで、登場人物の人生の縮図や人と人との絆を描くロードムービー。

震災から3か月後の6月11日に本作は公開する。東北地方でのロケも行っており、地元の方々の協力なくして完成できなかった作品であることから、福島出身の西田をはじめ登壇者一同が震災に遭われた方々を慮る言葉が発せられた。また、メガホンを執った瀧本監督は、ロケハンも含め何度も被災地を訪れているため「まだ言葉にならない。もう少し時間が必要」だと心情を吐露した。

昼間の撮影が中心となるため、夜は時間に余裕があったという。そこで西田は玉山と何度も、中村とは一度、飲みに行ったことを明かした。玉山が「青森の民謡居酒屋では津軽三味線で2時間ほど踊った。その節をどこでも踊っていい免状をもらった」と思い出を語れば、「東北はおいしい酒、北海道はおいしい魚がある。飲み始めて20分でベロベロ」と西田が呼応するほど。残念ながら物語の設定上、西田と玉山の共演シーンはないが、ぜひ踊りを披露できる作品で再共演してもらいたい。

300hoshiinu036川島は「私のデビュー作でご一緒させていただいた玉山さん。覚えていてくださるかな?と不安でしたが、ご挨拶したところ覚えていてくださって嬉しかった」と初々しくコメント。「有希は原作には登場しないキャラクター。明るく元気な子です。ひたむきに夢を追い、負けず嫌いで意地をはってしまう面が自分と似ています」と分析。

コンビニの店長を演じた、中村の撮影期間は3日。「前夜に現地入りしたところ、自分が泊まるはずの部屋に下着姿の男性が寝ていて驚いた。別の部屋で寝たが、後からそれが玉山さんだと知った。芝居に真摯な彼だから…」と。しかも、玉山ファンに対し「(下着は)ピッタリ」と身ぶりで語るサービスも。その話を受けて玉山が、「撮影が大変過ぎて自分の部屋が分からなくなるほど疲れていたのかも」と平謝り。いい思い出だと、ふたりは声をあげて笑った。

玉山の祖父役を演じた、藤は「初めての祖父役」だという。劇中では“星守る犬”の意味を自分の殻に閉じこもる孫にやさしく語りかける大事な役どころ。今は使われていない“消えた日本語”として語り続けられている慣用句だが、それを藤が語ると含蓄がある。実際に110万本(40万と70万の2面)のひまわり畑で撮影された心に残るシーンは一切のCG処理が施されていないことにも触れ、「映画『ひまわり』を彷彿させるが、(本作は)あたたかく希望とやさしさに満ちた名シーン」と述べた。

300hoshiinu044西田の妻“おかあさん”を演じた、岸本は「西田さんとは海荷ちゃんくらいの年齢の時に『西遊記』でご一緒して以来。夫婦を演じられて本当に嬉しかった。でも“おとうさん”と離婚後イキイキしていく“おかあさん”、女の人はなんて強いんだろうと思った。演じる際に監督から『もっと激しく』と演出された」と述べると、西田が「『もう限界!』(のシーンは)戦慄が走った。女の人が別れましょうと言ったら、取り付く島がない」とうなだれ、“おとうさん”っぽく、ハァとため息。

舞台あいさつでは小金井市立緑中学合唱部とキャストが、挿入歌「三百六十五歩のマーチ」を観客と一緒に大合唱。瀧本監督は「三歩進んで二歩下がっても“プラス1歩”が信じられた時代の歌。今は二歩進んで三歩下がる“マイナス1歩”の空気な気がする。それでもなお歩けと言いたい。そんな映画かなと改めて思っている」

そして西田が最後に「人と人との絆の希薄さに閉塞感を感じていましたが、震災以降、気持ちが一つと思えるようになったのも事実。悲惨な状況を目の当たりにし、今、その失っていたものを取り戻そうとしている自分もいると感じています」。「本作では“生きていくうえで何が大事か”を声高にではなく、やんわりと提示しています。素直に感情が揺れるまま鑑賞してください」と語った。

なお6月7日には、北海道名寄市にて映画公開記念セレモニーイベントが開催される。

日本公開=2011年6月11日
配給=東宝
公式サイト=http://hoshimamoru.com/
c2011「星守る犬」製作委員会
cJulie Minami

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◆原作はこちら

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