グリーン・ゾーン紛争地域を舞台にリアルな描写で緊迫感あふれるアクション・サスペンスが狙いだった本作。

大量破壊兵器はなぜ見つからないのか?と、命令に逆らってまで、その真相を追う男の姿にしびれました。


原題=GREEN ZONE
日本公開=2010年5月14日
配給=東宝東和
公式サイト=http://green-zone.jp/
c2009 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

イラク戦争から7年、真相を追う男をマット・デイモンが演じる!

物語が始まると余計なことを考える隙を与えず。本編(114分)にとっぷり浸れたのは、2010年は『第9地区』と本作だけ。サスペンスとして最高に面白く。手持ちカメラなのに酔わずに見続けられ、しかも鑑賞後に爽快感をもたらすとは!

本作の撮影監督であるバリー・アクロイドは、同じイラクのバクダットを舞台にし、アカデミー賞に輝いた『ハート・ロッカー』の撮影も担当しています。その2作を比べるとリズムの違いを強く感じました。『ハート・ロッカー』は緩急の差が強く、これぞ!実録風。他方『グリーン・ゾーン』は一定のリズムを保って物語が進みます。

タイトルの“グリーン・ゾーン(=安全地帯)”と呼ばれる地帯は、面積にして約10平方キロメートル。登場人物は、米国陸軍上級准尉のミラー、国防総省のパウンドストーン、CIAのブラウン、ウォール・ストリート・ジャーナルのデイン記者、元イラク兵のフレディ、そしてフセイン政権幹部のラウィ将軍。

特にマット・デイモン扮するミラーが魅力的でした。『ハート・ロッカー』の主人公が戦場でしか生きられないタイプだったのに対し、ミラーは『踊る大捜査線』の青島俊作タイプにたとえられます。

現場における指揮官の判断力をいかんなく発揮してゆく姿にほれぼれ。それは元イラク兵のフレディと対面したときの態度にも現れており、鋭い観察眼も読み取れます。

なおかつ、ミラーを立派な指揮官に見せることに成功した秘策が。それもそのはず。撮影に参加した部下役は、帰還兵たちだったそうで。役者に軍人の訓練をするより、軍人にセットの中で動いてもらうことで、真実味が増したという好事例。「有能な指揮官に見えたのは彼らのおかげ」とマット・デイモンが語っているほど。車の配置、人員配分、装備などイラクでの経験談を基に再現。訓練を受けた者は、劇中で本物の銃を手にしているという、徹底ぶり。

骨太映画の好きな方、見逃すなかれ。

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ポール・グリーングラス監督作

この『グリーン・ゾーン』のポール・グリーングラス監督も、「ボーン」シリーズの成功によってハリウッドのヒットメイカーとして認知されていますけど、英国出身です。キャリアの出発点がジャーナリストだということも彼のキャリアを語る上で欠かせません。

[Resurrected] (1989)
『極悪非道』 [Open Fire] (1994)
『ヴァージン・フライト』 [The Theory of Flight] (1998)
『ブラディ・サンデー』 [Bloody Sunday] (2002) ※脚本
『ボーン・スプレマシー』 [The Bourne Supremacy] (2004)
『ユナイテッド93』 [United 93] (2006) ※脚本
『ボーン・アルティメイタム』 [The Bourne Ultimatum] (2007)
『グリーン・ゾーン』[Green Zone] (2010)

ポール・グリーングラス監督の作品は、どれも見応えあるものばかり。しかもカメラワークに特徴があります。9.11事件におけるテロリストと乗客の戦いを描く『ユナイテッド93』や、1972年の北アイルランドの公民集会で13人の死者を出した「血の日曜日事件」を描く『ブラディ・サンデー(劇場未公開)』といった実話を基にした、過去作もぜひ。



【関連情報】

イギリスの巨匠ケン・ローチ監督の最新作『ルート・アイリッシュ(原題)』では、このグリーン・ゾーンと空港を結ぶ道路を描いていますが。同作は、今年のカンヌ映画祭の開幕直前にコンペティション作品に選ばれました。


イラクを描いた映画

イラクで実際に起きた事件を『カジュアリティーズ』のブライアン・デ・パルマが映像化。米兵が14歳の少女をレイプした末に、彼女の家族を惨殺する様を描く、衝撃作。
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出演:パトリック・キャロル
販売元:ジェネオン エンタテインメント
発売日:2009-03-06






女流監督キャスリーン・ビグローが、イラクに駐留する爆発物処理班の兵士を骨太に描く。第82回アカデミー賞作品賞&監督賞含む6部門受賞作。
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